唯一の樹の下で

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いつか見た夢の話をしよう。
いつだったか、雪が降っていたようなそんな季節の話。
手もかじかむし、コート着てないと歩けないような、そんな季節。

いつも通り自転車で学校まで(その頃は学生だった)の道のりを漕いでいた。
すると見慣れない女の人が僕の目の前を自転車で走っていた。
というか、当たり前である。
毎日見慣れた人しか見かけないような田舎ではないのだ。
まぁそんな訳でその人に特に気を止めることなく走っていたのだが。

5分ほど経った頃だろうか。
気づいたらまだ僕はその女の人の後ろを走っていた。
道が同じだけの話だ。

手は手袋をはめていても冷たくなっているし、
コートを着ていても寒いものは寒い。
けど気づいてみれば、前の女の人はこの寒い中、薄手のセーターみたいな物と、スカートだった。
淡い青のいや、水色と言ったほうがいいセーターと、白の清楚なスカート。

その女の人の長髪とあいまって、よく似合っていた。

別にそんなまじまじと見る気はないのだが、目の前を走っているのだ。
嫌でも見える。

まぁえてして女性のほうが寒さには強いみたいだし、
と冬場でもスカートの女子を見て思っていた僕はそのまま気にせず走り続けていた。

そして多摩川の近くにある高校につこう、という頃、1回だけその女の人は振り返った。
といっても、僕を見たわけではなく、安全を確認するとか、そういう類の物だったと思う。

けど僕は見てしまった。
その女の人は泣いていた。
多分20歳前半くらいだろうか。
飛びぬけて美人でもないけれど、まぁ美人と言える顔。
そして、僕とは違う方向へ自転車を漕いでいった。

彼女は一体何で泣いていたんだろうか。
真冬とは言えないまでも、あの寒い時期にあの薄手で。

寒さが近づいてくると思い出す。
今彼女は笑っているだろうか、それともまだ泣いているだろうか。

冬はもう近い。
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2003/10
【コメント】
奇麗ではなかったが、美しい人だった。

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