唯一の樹の下で

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arrow 黙祷
―祈る対象を持たない私には、虚無への黙祷しか出来ない。

静かな海に私は佇む。
夜の海。
誰もいない、何もいない。

遠くの空でふっと夜空を切り裂く一筋の光。
しかし祈る間もなくまた虚空へと消えていく。

そして太陽が昇り始める。
静かに、しかし荒々しく。
街は活気を取り戻し、またいつもの世界が始まる。

何もない世界へと旅だっていた私は、後ろを振りかえる。
深い、深い森。
何者も寄せ付けないような闇。
しかし私は歩いていく、何事もなかったように。

記憶の片隅でずっと流れてる歌がある。
遠き誰かの先祖達が残したのかもしれない、
そんな哀愁を持つ歌。

虚無や深遠なる闇が似合う歌。

私はその歌を思い浮かべながら森を歩く。

いつか来た道、
また来た道。

静寂があたりを包む。
まるでどこかの草原を一人漂っているような気すらする。
向こうには山が蔭り、そして見渡す限りの大地がある。
豊穣を祈るでもない、雨を乞うでもない、
ただただ自然の大地。

時に荒々しく、時に静かに、私を包む。

悲しみをふと覚える。
私は何者にも干渉されず生きてきた。
自然と、虚無と、闇にだけ包まれ。
上を見上げる。
濃い闇と相反するような蒼い空。
ただ穿たれたような不自然に自然な空。

私は胸の前で手を合わせ、そして祈る。
空に、森に、闇に、虚無に。

祈りの言葉が出てくるでもない。
崇拝すべき対象が出てくるでもない。

ただただ虚無への黙祷。

―祈るべき対象を持たない私には、
ただ虚無への黙祷しかできない。
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2003/04
【コメント】
"Inspiration by 大嶋啓之 -虚無への黙祷-(musics)"
Long版の為にCD買った。情景が流れるような音楽が好き。

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