唯一の樹の下で

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唯一の樹の下で > TEXT > 笑顔、悲劇、笑顔

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ずっと笑っている。
あれ以来ずっと笑っている。

ともすれば自分は壊れてしまったのだろうか。
いや、壊れてはいない。
笑うのは簡単だ。
頬をそう動かしてやればいい。

暑い日。
夏の暑い日。

いつものように君に呼ばれた僕は、
ささいな違和感に気付く筈も無く、
ただただ盲者のように、君の後を追っていった。

君は、崖の近くに立ち、
そして笑った。

僕はと言えば、
夏の鬱陶しいまでの太陽と、
そして君の神々しいまでの美しさに、
ただ何も出来ないでいた。

「ねぇ、笑ってよ」

君は小さく呟いた。
風にすら運ばれてしまいそうなその声は、
しかし、大きく僕の脳内を巡っていった。

僕はちゃんと笑えただろうか?
君は満足したのだろうか?

…僕が笑うという行為だけで。

端から見れば滑稽な状況だったろう。

まるで2体の精巧なマネキンみたいに動かなかった僕ら。

それは、チンケな表現ではあるが、
何分かも知れないし、何秒かもしれないし、
何時間かも知れなかった。

そして君は、やはり小さく
「ありがとう」

と呟き、いつの間にか持っていたカッターで、

…手首を、切った。

赤い噴水みたいになりながら、笑顔の君。
それを見ながら、何もできず、笑顔な僕。

やがて風に運ばれるように、
崖の下に落ちていった君。

・・・何故だろうか。
それ以来、僕は笑顔をなくす術を無くした。

それは君が笑ってと言ったから?

それとも風に運ばれた君が、最後まで笑顔だったから?

…恨みとも見える、冷たい笑顔だったから?
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2001/12
【コメント】
チンケだね。

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